生きていると、急にお金が必要になる場面に遭遇します。
例えば、葬儀は急に連絡が来るものであり、予測することが困難です。
そんな時、クレジットカードのショッピング枠の現金化を実行すれば、迅速・簡単に現金を確保できます。
葬儀のように1回限りの出来事であれば、クレジットカード現金化は優れた手段と言えるでしょう。
しかし、家賃や水道光熱費の支払い期日が迫っているのに手元に現金が無く、やむを得ずクレジットカードのショッピング枠を現金化し、一時的に資金を用意するという方もいらっしゃいます。
そのようなケースでは、現金化で一時的に資金繰りを改善しても、根本的に収入が増えなければ再び支払いに追われることになります。
クレジットカードの現金化以外にも消費者金融から融資を受けるなど様々な現金確保手段が存在しますが、あらゆる手段を尽くしても経済状況が改善されない場合は、自己破産することも視野に入れましょう。
自己破産は決して恥じるべきことではなく、生活を立て直すための正当な手段です。
なお、「クレジットカードの現金化を行うと自己破産できなくなるのではないか」とご心配になる方がいらっしゃるかもしれません。
結論から述べると、クレジットカード現金化を実行していたとしても、自己破産は可能であり、きちんと免責されます。
本記事では、クレジットカードのショッピング枠を現金化した後に自己破産をする方法・流れについて徹底解説いたします。



このページでわかる事
クレジットカード現金化の法的問題
クレジットカードのショッピング枠を現金化することは法的に問題があるのか不安に感じている方がいらっしゃるかもしれません。
現時点では、一般利用者が現金化を実行すること自体を理由として逮捕された事例は存在しないので安心してください。
ただし、民事の面で責任が問われる可能性があるので注意しましょう。
特に、自己破産をした後に免責されるかどうかの判断において、クレジットカードの現金化を実行しているかどうかが問われます。
なお、法律を文字通り解釈すると免責されないように思えますが、実際は裁判官の裁量で免責されます。
本当に困った場合は弁護士に相談し、自己破産を行いましょう。



刑事上の問題点
クレジットカードのショッピング枠の現金化を行うに際し、「逮捕されるリスクはあるのか?」と不安になる方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、現在まで、一般のクレジットカード利用者が現金化を理由として逮捕された事例は存在しないので安心してください。
現金化業者については、「実質的に貸金業を営んでいた」とみなされて、出資法違反で逮捕された事例が存在します。
ただし、検挙された業者は、現金化を実行する際に形式的に商品を受け渡すことすらしていないなど、様々な問題点があったり、裏で闇金業を営んでいたりといった事情がありました。
そのため、殆どの現金化業者は安全と考えて良いでしょう。
民事上の問題点
民事上の問題点としては、カードの利用規約に違反していることが挙げられます。
万が一、クレジットカード会社が現金化に気が付いた場合、カードの利用停止や一括返済を求めてくる可能性があります。
そのため、一度に大量の現金化を実行することはおすすめできません。
カード会社は、過去の利用者の膨大な取引記録を蓄積しています。
そのため、「こういう場合には規約違反の可能性が高い」といったパターンをデータベース化しており、似たような取引が行われると自動的にアラートを出すようなシステムを構築しています。
疑わしい取引があった場合には、詳しく調査される可能性があります。
- ただし、カード会社の規約に違反していたからといって警察に逮捕されることはありません。
- ただし、最悪、財産の差し押さえを受けることになるので、持ち家に住んでいる場合は注意すべきでしょう。
なお、クレジットカードの現金化を行った場合に「自己破産」が可能なのかという問題がありますが、結論としては可能です。
ただし、裁判官の「裁量」で免責を許可される必要があるため、弁護士に依頼した上で自己破産を行うことが推奨されます。
クレジットカード現金化を実行した後でも自己破産は可能
クレジットカードのショッピング枠は、本来、商品やサービスの購入費用を支払うために存在します。
そのため、現金化目的で利用すれば、カード会社の利用規約に違反することになります。
カードの利用規約に違反する使い方を行った後に自己破産をした場合、「免責不許可事由」(破産法252条1項各号に列挙された事由)に該当します。
そのため、機械的に条文を読んで当てはめた場合は「免責されない」とお考えになるかもしれません。
しかし、実際は破産法252条の規定を根拠にして、裁判官の裁量によって幅広く免責が行われているので安心してください。



自己破産の手続きの流れ
自己破産は、裁判所に「破産申立書」を提出し、「免責許可」をもらう手続きです。
これにより、養育費や税金といった「非免責債権」以外の全ての借金がゼロになります。
自己破産の手続きとしては、
- 「異時廃止」
- 「同時廃止」
が存在します。
異時廃止では、管財人による調査が行われるため、破産手続開始と同時に手続きが終了しません。
他方、同時廃止では、管財人による調査が行われないため、破産手続開始と同時に手続きが終了します。
異時廃止の大まかな流れを示すと、以下のようになります。
- 裁判所に「破産申立書」を提出する
- 裁判所が破産管財人を選任し、「破産手続開始決定」を出す
- 管財人による財産調査が実施された後、債権者集会が開かれる
- 廃止決定(破産手続きを終了させる決定)が出される
- 免責許可・不許可決定が出される
これに対し、同時廃止の場合は、破産管財人が選任されることはなく、破産手続開始決定と同時に手続きが終わります(上の①から④まで)。
その後、免責許可・不許可決定が出されることになります。
一般的に、異時廃止の場合は全手続きが終わるまでに数か月以上の時間がかかり、20万円~30万円程度の費用が必要になります。
同時廃止の場合は、2週間から1ヶ月程度で手続きを終えることが可能であり、少ない費用で済みます。
どちらの手続きが採用されるかは、裁判官の判断によって決まります。
- 基本的に、20万円~30万円の費用を用意できない場合は、同時廃止になります。
- ただし、浪費やギャンブルといった免責不許可事由がある場合は、同時廃止ではなく、異時廃止になるケースが多い傾向があります。
実際には、個々のケースで臨機応変な対応が必要になるので、自分で手続きを行うのは避ける方が良いでしょう。
特にクレジットカードの現金化を行っている場合、「免責不許可事由がある」と判断されて異時廃止の手続きになる可能性があるため、まずは弁護士に相談すべきです。

免責不許可になる事例
破産法252条1項では、免責不許可となる事由が列挙されています。
免責不許可になる具体例を挙げると以下のようになります。
免責不許可になる事例
- クレジットカードのショッピング枠で購入した商品を現金化する
- 収入に見合わない買い物や遊興といった浪費を行う
- パチンコ、競馬、競輪などのギャンブルを行う
- 株取引、FX取引、先物取引、仮想通貨取引を行う
ただし、これらの行為も程度問題であり、例えば、少額の株式の現物取引を行ったからと言って、必ずしも免責不許可になるわけではありません。
信用取引などで極めてリスクの高い売買を行って「射幸行為」とみなされた場合に問題となります。
なお、クレジットカードのショッピング枠の現金化の場合、免責不許可事由に該当しているものの、実際には殆どのケースにおいて裁判官の「裁量」によって免責されています。
クレジットカード現金化を実行していても免責不許可にならない
破産法252条1項には免責不許可となる事由が列挙されており、クレジットカードの現金化も免責不許可事由に該当します。
しかし、破産法252条2項では、以下のように規定されています。
破産法252条2項
「前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。」
つまり、免責不許可事由があったとしても、裁判官の「裁量」で免責を出すことが可能となっています。
クレジットカードの現金化を実行した場合は、「反省の意」を示すことによって免責されるケースが殆どなので安心してください。

クレジットカード現金化実行後に自己破産する場合は弁護士に相談すべき
クレジットカードの現金化を実行した後で自己破産を行う場合、「異時廃止」になったり、「裁判官の裁量」で免責決定が出されたりする可能性があるため、本人訴訟ではなく、経験豊富な弁護士に依頼することをおすすめします。
しかしながら、「弁護士に依頼するための費用を用意できない」とお悩みの方がいらっしゃるかもしれません。
資産や収入が一定以下の場合、法テラス(日本司法支援センター)を利用できるので、相談してみましょう。
具体的には、以下の条件に適合していれば、法テラスを利用できます。
- 収入要件を満たす
- 資産要件を満たす
世帯人数や居住地によって異なるので一概には言えませんが、単身世帯の場合、収入要件は月収20万200円以下、資産要件は180万円以下と定められています。
自己破産を検討している方であれば、適合する可能性が高いでしょう。
なお、法テラスでは、3回まで無料で弁護士に相談することが可能です。
ただし、相談だけではなく、実際に依頼して書面の作成などをしてもらう場合は、弁護士費用は無料ではなく、法テラスが立て替える形になります。
かかった費用を後で償還(返済)しなければならない点に注意してください。
クレジットカードの現金化を実行してしまっている場合は、免責不許可事由に該当するため、自分自身で破産手続きをするのではなく、弁護士に依頼することをおすすめします。



クレジットカード現金化の実行後に自己破産しても免責されるので早目に弁護士に相談しよう
クレジットカードのショッピング枠を現金化していても自己破産することは可能です。
免責についても、裁判官の裁量で認められるので安心してください。
「現金化してるから自己破産できない」などと諦めずに、本当に困った場合は弁護士に相談して生活を再建しましょう。
なお、弁護士費用を自力で用意できないのであれば、法テラス(日本司法支援センター)を利用しましょう。
クレジットカードの現金化を実行している場合は、裁判官の裁量で免責が許可されることになります。
そのため、自分自身で手続きを行うことは避け、経験豊富な弁護士に任せることをおすすめします。
本記事が、クレジットカードのショッピング枠を現金化した後に自己破産を検討している方のお役に立つことができれば幸いです。
まとめ
- 現在まで、一般のクレジットカード利用者が現金化を理由として逮捕された事例は存在しない
- 自己破産をした場合、裁判官の裁量によって幅広く免責が行われている
- 自己破産する場合は弁護士に相談すべき